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2019-06-27 17:00
(連載2)習近平政権はスターリン主義を踏襲するのか
加藤 成一
元弁護士
「台湾併合」について一言すれば、人口2400万人の台湾は、戦後一貫して中華民国政府が主権を有して統治を行い実効支配している実質的な主権独立国家である。実質的な主権独立国家である台湾への武力侵攻は国際法上の侵略行為であり、単なる内戦ではない。万一、台湾が中国に併合されれば、日本の地政学上の脅威が格段に増大し、尖閣諸島や沖縄本島がたちまち脅威にさらされ、台湾の次は日本が中国による領土拡張・覇権拡大のターゲットになることは必至である。
上記(3)(4)の公安警察による恐怖政治や党中央機関等による言論統制についても、習近平政権がスターリン主義を忠実に実践していることは明らかである。もとより、習近平政権を批判することは「国家反逆罪」や「国家転覆罪」に問われ到底許されず、党中央機関等による言論統制は徹底している。中国での「民主化運動」が徹底的に弾圧されていることは、人権派弁護士の長期拘束や「国家転覆罪」等の罪名による長期の有罪実刑判決など、各種報道等で周知の事実と言えよう。しかし、常に国民を監視し、厳しい言論統制をしなければ共産党政権自体が維持できないとすれば、それは政権の真の強さではなく弱さの一面でもあると言えよう。
上記(5)のスターリン政権を含めソ連が日本など西側諸国に対する「スパイ活動」により高度科学技術情報や軍事技術情報を窃取していた事実は、「平成3年版警察白書」にも記載されている。最近の「米中貿易戦争」においても、米国の先端科学技術企業や先端科学技術系大学における中国人従業員や中国人留学生の各種スパイ活動による先端科学技術情報等の窃取や、中国が中国駐在の米国合弁企業から最新の先端科学技術情報等を不正に取得していることは、米国が厳しく指摘している。このように、習近平政権はスパイ活動による最新技術の窃取についてもスターリン主義と重なる部分がないとは言えない。また上記(6)(7)の民主集中制による絶対的権力の掌握や、スターリン主導のコミンテルンやコミンフォルムによる各国共産党への覇権主義と同様に、絶対的権力を掌握した習近平政権は、2015年設立のAIIB(アジアインフラ投資銀行)など、中国主導の国際機関を次々と設立し、「一帯一路」構想を含め、米国に代わり世界の覇権を狙うなど、同政権は現代のスターリン主義を実践する政権ではないかと考えたくもなる。
日本は、米国、カナダ、豪州、インド、英国、フランスなどの、自由と民主主義、法の支配の理念を共有するインド太平洋諸国等と政治的、経済的、軍事的に緊密に連携協力する必要がある。そして、国民の人権を抑圧し、少数民族を弾圧し、共産党一党独裁であり、スターリン主義をも髣髴とさせる中国・習近平政権によるアジア太平洋地域における軍事的強権的覇権だけは、決して許してはならないのである。それは、将来、アジア太平洋地域において、日本をはじめ自由主義諸国が享受している「自由と民主主義」の死をもたらす恐れがあるからである。(おわり)
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加藤 成一 2019-06-26 16:17
(連載2)習近平政権はスターリン主義を踏襲するのか
加藤 成一 2019-06-27 17:00
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