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2019-11-26 14:00
(連載2)GSOMIA失効回避:「腐っても鯛」の米国と一部のリアリズムはあった文在寅大統領
松川 るい
参議院議員
「いつでも失効可能との前提付き」というのは、実際問題は韓国国内向けの面子を立てるための文言で実行可能ではないだろう。日本との輸出管理の協議が思い通りに進展しなかったとしても、上記のとおりGSOMIA破棄そのものが米韓同盟に対する挑戦なのだから、韓国が日本のせいにして廃棄するのは簡単ではない。今回、破棄できなかった状況が変わるわけではない。むしろ、韓国がGSOMIA破棄をすることになるのは、米国の駐留経費交渉で米国が余りにも酷い対応をするなど(実際、アラブ商人式の交渉戦術なのかもしれないが前年度の5倍をふっかけるというのは酷いと思う)、米韓同盟そのものの意義について韓国が疑問を持った時だろう。
朝鮮半島は長らくというか歴史の殆どは中国の影響下にあった場所であり、例外は日本による韓国統治と現在の米韓同盟だけである。だから米韓同盟を等閑視すべきでない。だから、米側に留めるために努力は必要だと思う。北朝鮮の核ミサイルが強化されており南北関係も進展がない中で、やはり韓国の防衛のために韓国にとってGSOMIAはあった方が良い。そして、中国やロシアや北朝鮮との関係でも、韓国防衛には依然、米韓同盟が重要であるという現実的で全うな判断をしたということである。親北極左勢力の中には、米韓同盟を離れて南北統一しても構わないという考えの人もいる中で、文在寅大統領が最後はイデオロギーではなく現実的判断をしたことは評価されていい。もちろん、破棄すれば交渉が厳しくなるため、国会選挙にも及ぶかもしれないとの判断もあっただろうけれど。もっとも、GSOMIAについては、韓国は、喧嘩の仕方を間違えたのだとも思う。韓国式の喧嘩をやってみたのだが、それは米国のカウボーイ気質に全く合わなかっただろう(ちなみに、日本の侍文化とカウボーイ気質には通じるものが)。別目的の達成のために気軽にGSOMIAという大事なものを「賭け」てしまうという感覚は理解できないだろうし、不信感が募ったに違いない。
韓国との喧嘩のやり方は、相手と向き合うというよりは、まず自分の主張を盛りにもって騒ぎ、その場所にいる一番強い人や影響力のある人にアピールして、相手に圧力をかけてもらう(路上に出ての夫婦喧嘩然り、今回のWTO提訴然り、慰安婦の世論戦然り、ハーグ密使事件然り)。今回もGSOMIAそのものが嫌だというより(外交官や軍人はじめ韓国政府内で重要性を理解している人は多かったと思う)、GSOMIA破棄カードをちらつかせ、米国をして日本に輸出運用管理見直しの圧力をかけさせようという思惑だったと思う。しかし、米国は乗ってこなかった。米国からすれば、GSOMIAと輸出運用管理は関係ないし、何よりGSOMIAというそれ自体韓国自身にとっても重要なものをそのような「賭け」に気軽に使うという感覚が信じられなかったに違いない。それにしても、米国は、ここまでハイレベルで明白な要請をしたのに途中まで韓国が効く耳をもたなかったことに驚いたに違いない。韓国にとって米国はそれほど重要ではないのか、怖くはないのかと。米中の覇権争いの中で、韓国は、インド太平洋戦略に明確なコミットをせず、中国との関係に配慮して三不政策(日韓同盟にならない、これ以上THAAD配備しない、米国のミサイル防衛システムに入らない)にコミットした。もともと、米国が韓国についてどっち向いているんだと思う要素はあった。今回のGSOMIA破棄に関する米国のここまでのあからさまな説得は、むしろ、韓国に対する「踏み絵」のような面もあったといえる。突き詰めて言えば「韓国は、米国の陣営にいるのか。それとも、離れて別のところ(中国の方)に行ってもいいと思っているのか」という。
韓国は、というか文在寅大統領が、米韓同盟を選んだ。そのことはとても意義のあることだ。廬武鉉時代にも米国に戦時統制権返還を迫って結局最後は廬武鉉が米国に縋った記憶がある。廬武鉉大統領の側近だった文在寅大統領だが、その当時の米国と韓国の力関係と今とは違う。中国も違う。米中のパワーバランスも近づいてきた。親北左翼の文在寅大統領は一体どうするのだろうと不安に思っていたが、少なくとも今回、廬武鉉大統領同様、現実的選択をした。一部のリアリズムはあったのだ。というか正気に返ったということか。アメリカファーストで同盟国にも無理を言ってくトランプ政権下でいろいろある米国ではある。でも、米国はやはり「腐っても鯛」なのだ。(おわり)
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(連載1)GSOMIA失効回避:「腐っても鯛」の米国と一部のリアリズムはあった文在寅大統領
松川 るい 2019-11-25 15:14
(連載2)GSOMIA失効回避:「腐っても鯛」の米国と一部のリアリズムはあった文在寅大統領
松川 るい 2019-11-26 14:00
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