ウォール・ストリートのメガバンクが先の危機で学んだことは、「“too big to fail”であれば、また失敗しても政府が国民の税金で救済してくれ、また更に儲けることができる」ということであった様に思われる。従い、株価の暴落は予め予期されていたものであり、コロナウイルス騒ぎが引き金を引き現実となったものである。即ち、問題は資本主義そのものが「産業資本主義」から「金融資本主義」に転化したことにある。つまり「金が金を生む」ものに変質し、社会の発展の基礎となる技術革新を怠ってきたということだ。その間、5Gをみればわかるように、中国が西側諸国に追随を許さないほど技術的にもコスト的にも優位に立ってしまった。今も優秀な学生は地道な科学や技術の研究ではなく、直ぐ金になる金融の世界に進む傾向にあり、益々中国の優位が際立ってくることが危惧される。
一方、これに気付き改めようとする動きがあることは朗報である。本年1月のダボス会議で採択された「ダボス・マニフェスト2020」には、資本主義が現在の“Stockholders’ Capitalism” (株主の価値を最大化するのが目的、企業はもっぱら時価総額で評価される)から“Stakeholders’ Capitalism”(株主のみならず従業員、顧客、住民、など関係者全ての利益をめざす)に代わるべきである、との提言がなされた。それに先立ち昨年8月、アメリカの主要経済団体の一つである「ビジネス・ラウンドテーブル」 は181のCEOが署名した「米国企業は、顧客、従業員、供給者、地域社会、そして株主、全てのステークホルダーの利益に貢献する」との声明を発表し、調印者の中にはゴールドマン・サックス、シティ・グループ、バンク・オブ・アメリカなどの金融大手も名を連ねている。更に、2018年アーミテージ・ナイレポートでは、日米安保条約2条(経済協力)に言及し、“Business Government Dialogue”を開き、日米CEOと両国の政府高官が一同に会して議論すべきことを提唱し、経済と安全保障をリンクさせている。