この関連で、世界保健機関(WHO)は、2015年に新型感染症の名称の付け方について、その名称のイメージから特定の人や地域に及ぶ「不必要な不利益を最小化するように」との指針を出している(WHOウェブサイト "WHO issues best practices for naming new human infectious diseases” 2015年5月8日付)。この方針に各国とも異論はないであろうし、既存の地名を伴う感染症名(エボラ出血熱、中東呼吸器症候群、スペイン風邪等)も今後は言い換えが検討される可能性もある。だがこれは正式名称の話であって、今回のように、新型ウイルスの名称が「COVID-19」と決まる以前に、もっぱら中国、韓国、日本の間で感染の嵐が巻き起こっているかのような報道がなされ、その結果、このウイルスが東アジアという特定の地域と結び付いたイメージで定着してしまった。ある地域への負のイメージのレッテル貼りは不毛であるが、残念ながらこうした騒動にはつきものである。