① 香港を長期間機能不全に陥れた過激派による破壊行為を、香港政府が独力で鎮圧することに失敗した状況下で、秩序回復のための国安法導入はやむを得なかった。
② 治安維持は国の当然の義務であり、人権擁護名目での外国からの干渉は、香港社会を分断し、仕事と生活を妨害するものであり、非常に迷惑だ。
③ 国安法は、一国二制度を反故にするものとの批判があるが、「資本主義制度(香港)」と「社会主義制度(中国)」の二制度並存については何も変わっていない。
④ 国安法は、民主主義を否定するものとの批判があるが、97年の返還以前から、香港に完全な民主主義が存在したことはない。香港返還で、中国が英国から引き継いだ最も貴重な遺産は、「限定的な民主制度」の下での「世界一規制の少ない自由で公正なビジネス環境」で、国安法導入後も、中国にその遺産を手放す意思は全くない。
⑤ 国安法の施行により、香港の政治と治安は「安定」し、中国との関係も深まるだろう。それこそ世界の金融界が求めているものだ。
香港人の自信の背景に「依然として強い国際競争力」がある。6月16日、スイスの有力ビジネススクールIMDが、2020年度版「世界競争力ランキング」を発表した。これは63の国と地域を対象として、各国政府や世界銀行の統計データと、経営者へのアンケート調査を基に「企業が持続的に価値創造を行える環境が育まれている度合い」を比較したものだ。
このランキングで、香港は、前年から3ランク落ちたものの、世界5位という高い評価を得ている。ちなみに、1位はシンガポール、日本は、前年度から4位後退して34位だった。
10月のジェトロの意識調査では、67%の企業が国安法による報道規制を懸念しているが、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF)が発表した「報道の自由度ランキング」 2020年度版によれば、IMDの国際競争力1位のシンガポールの報道自由度は、世界180ヵ国中158位、香港は80位といずれも低く、報道自由度と国際競争力との関連性はここでは見いだせない。日本の報道自由度はOECD諸国中最下位の66位だった。
今後、米国による追加制裁など不確定要因は残るが、おそらく香港はこれからもアジアの国際金融センターとして生き残っていくだろう。それよりも、今われわれが憂慮すべきは、急速に進む「日本の衰退」ではないか。(おわり)