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2022-06-30 15:46
(連載2)参院選争点「内部留保課税」をどう見るか
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
また、設備投資ではなく現預金に「内部留保課税」をすれば、銀行借り入れ等でも現預金は増えるから、企業は借入に慎重にならざるをえない。なぜなら借り入れで負債が増えているのに課税されることになるからである。また、企業が「内部留保課税」を回避するために労働生産性を無視した賃上げをした場合は、利益剰余金は減少し「内部留保課税」回避の効果が生じるが、その分企業の体力が減退する危険性がある。
これは日本経済全体にとって明らかにマイナスである。このように、内外からの厳しい競争にさらされている企業にとっては、労働生産性の向上による競争力の強化が不可欠であり、これを無視した賃上げをもたらしかねない「内部留保課税」は日本経済を衰退させる危険性がある。
企業の「内部留保」は、緊急時でも雇用を守り、従業員の給与を保障するための保険として積み立てられている側面が強い。したがって、仮に、画一的な「内部留保課税」が行われれば、企業の体力が大きく削がれ不況時の雇用が難しくなる。特に、コロナ禍のような緊急事態の発生時には大規模なリストラなどを迫られる大企業が多く出るのではないか。
そして、何よりも、欧米諸国に比べて高い法人税(「実効税率29・74パーセント」)を納めた後に、加えて「内部留保課税」が課されるとすれば、それは二重課税であり、税制上大きな問題となろう。いずれにせよ、ストックへの課税となる「内部留保課税」は企業の体力を減退させ、国際競争力を著しく劣化させる危険性が大きい。日本共産党の「内部留保課税」は相変わらず大企業(「独占資本」)を敵視する思想的背景からくるものでもあり、危険である。賃上げや設備投資の促進は、懲罰的な大企業への「内部留保課税」ではなく、政府と民間の連携協力による強力な経済成長戦略(「情報通信・AI・先端科学技術・エネルギー産業等」)の遂行によるべきである。(おわり)
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(連載1)参院選争点「内部留保課税」をどう見るか
加藤 成一 2022-06-29 20:34
(連載2)参院選争点「内部留保課税」をどう見るか
加藤 成一 2022-06-30 15:46
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