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2022-08-25 20:55
(連載1)原発を拠点に使うロシアの懐具合
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
今年の2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まり、昨日でそれから半年になる。現状に関して、様々な感想が聞かれる。ゼレンスキーやウクライナが頑張っていることを称賛する内容のものや、ロシアのプーチン大統領に対する反戦の訴えの内容も少なくない。市井で政談が活発に行われる中で「意外とロシア軍って弱いのではないか」というような声が、意外と無視できなくなってきている。さすがにロシア軍が負けるという予想は少数派だが「もっと早くウクライナを占領すると思っていた」とか「ロシアが圧倒的な強さがあったはずではないのか」というような声が少なからず存在する。
そもそも「ロシアの敗北」といっても、今回のウクライナ侵攻に関して「勝利」とは何で「敗北」とは何なんなのかという勝敗条件がしっかりしていない。現代戦はそういうものであるが、ロシアは「特別軍事作戦」を行っているだけという建前なので、宣戦布告をしていない。予告なしに一方的に軍をすすめた違法な戦闘行為であるということだ。ロシア軍は当初掲げていた「ネオナチ政権の打倒」とはすでに違う企図のために行動しているようにも思われ、ロシアは様々な大義を広報してはいるが実際のところ、ロシアにとっての「勝利」とは何を指すのか、プーチンは何が達成されれば満足するのかはいまや推測するしかない。
ロシア側の主張を整理すると、目的は「ドネツク・ルハンシクの二つの州の独立」の支援であり、ウクライナ人によるロシア系住民に対する虐殺の阻止である。そこに副次的に、その犯人を捕まえる必要もあると少なくとも2月から3月にかけてプーチン大統領は主張していたのである。プーチン大統領の主張に従えば、その首謀者がネオナチといわれる人々でそれを保護しているのがゼレンスキー大統領であるからネオナチ政権の打倒のためにキエフ(キーフ)まで占領する必要があるという論建てになるので、直截的な表現をすれば結局はキエフにいるゼレンスキーを拘束してウクライナを乗っ取ることがロシア側の思惑と推察された。しかし、その目的が達成できていない。二州の独立という目的に関しても、実は5カ月たった最近やっとロシアが東部の主要都市の実効支配を確立しつつあるものの、東部二州はいまだにウクライナとの交戦が日々続いている地帯である。ましてや、キエフへの侵攻は事実上短期的には挫折したことを認めているも同然という状況だ。南部戦線では一時期ロシアが猛烈な攻勢をかけていたが、現在ウクライナの反撃がおそらくクリミア半島を含めた南部広域で行われているということを考えると、まだその状況が落ち着いていないということを意味しているのである。
さて、まずロシアの2月24日時点のウクライナ侵攻参加人数は23万人といわれている。これは兵員であって軍属が含まれていない。ニュースを読むときにしっかりと気にしなければならないのは「兵員(軍人)」が死んだのか「軍事関係者(軍属)」が死んだのか、または「民間人」が死んだのかということの区別である。(つづく)
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