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2025-02-14 15:01
(連載1)変節漢、ルビオ新国務長官は信用できない
河村 洋
外交評論家
共和党のマルコ・ルビオ上院議員は、ドナルド・トランプ大統領の2期目の就任式の日に満票で国務長官に承認された。彼はトランプ政権の中では物議を醸すことの少ない候補者の一人であるからこそ、第2次トランプ政権で任命される最初の閣僚となった。ルビオ氏がトランプ氏の指名した何人かの閣僚候補者よりもはるかにましなことに疑いの余地はない。国防長官に指名されたピート・ヘグゼス氏はアルコール依存症と性的暴力のために、その資格を厳しく問われた。だがJ・D・バンス副大統領の決選投票により、国防長官の指名は上院で辛うじて承認された。国家情報長官に就任したトゥルシ・ギャバード氏も、ロシアやシリアのバッシャール・アサド元大統領寄りの発言ついて厳しく問われた。ギャバード氏の任命はファイブ・アイズの情報協力を壊滅させかねないため、イギリスの国家安全保障関係者は当件について非常に懸念している。ルビオ氏はこうした新閣僚ほど問題視されていないが、2016年の大統領選挙の共和党予備選でトランプ氏に屈して以来、外交政策で方針転換してしまったことを忘れてはならない。またルビオ氏は自身の選挙運動中でのトランプ氏への嘲笑に対してお世辞のような謝罪をしたが、トランプ氏の方がルビオ氏にもっと容赦ない罵倒を浴びせたので、そうした態度はアルファ雄ゴリラに対して惨めに媚びを売るかのように見えた。
ルビオ氏はオバマ政権の任期終了が迫った時期の大統領選挙出馬以前から、下院と上院で長らく外交問題に携わってきた。共和党予備選ではトランプ氏のアメリカ・ファーストよりも、元共和党候補ジョン・マケイン氏の世界におけるアメリカのリーダーシップのビジョンに共鳴する「新たなアメリカの世紀」の理念を掲げた。ますます相互に結びつく世界において、海外の混乱が米国の国家安全保障に与える影響は充分に認識していた。そのため、当時の大統領バラク・オバマ氏の「ネーション・ビルディング・アットホーム」政策について、国防費の大幅な削減、理念外交への懐疑、ロシア、中国、イラン、イスラム過激派などを含む世界中の敵に対する宥和政策といった点から批判した。さらに重要なことに、ルビオ氏は世界の安全と繁栄のために、アジア、ヨーロッパ、中東へのアメリカの永続的な関与を支持した。ルビオ氏は予備選挙の討論会で、自分より外交政策の知識も経験もはるかに少ないアルファ雄ゴリラに「核の三本柱」の概念を解説講義したにもかかわらず、トランプ氏の軍門に下ってからは外交政策の見解を彼のアメリカ・ファーストに合わせた。
そうした一貫性のなさは、ルビオ氏の外交政策顧問を務めたマックス・ブート氏によって批判された。2021年のPBSニュースのインタビューで、ルビオ氏が選挙活動を中断した後にトランプ氏に対する態度を変えたため、ブート氏は失望したとコメントした。ルビオ氏が選挙活動を続けていた時には、トランプというアルファ雄ゴリラが核軍備管理について致命的に無知であるために最高司令官としての資格に疑問を呈していた。しかし選挙活動から撤退した後、ルビオ氏はトランプ氏の主張の大義について語り始めたばかりか、言葉や言い回しまで真似し始めた。明らかに、今回の政権入りはアルファ雄に対するそのような忠誠心に対する見返りである。注目すべきことにブート氏と同様に共和党大統領候補ジョン・マケイン氏とミット・ロムニー氏の外交政策顧問を務めたロバート・ケーガン氏は、民主党候補ヒラリー・クリントン氏の陣営に加わった。初期の段階ではトランプ氏が泡沫候補とみなされていたにもかかわらず、ケーガン氏は共和党の劣化をうかがわせる何らかの兆候に気付いていたのかもしれない。またトランプ氏に対する「長い物には巻かれろ」と言わんばかりの卑屈な態度に見られるように、ルビオ氏の人格的欠陥を認識していたのかもしれない。
就任前の上院承認公聴会でルビオ氏は自身の外交政策の見解を概括したが、それは2016年の選挙運動で掲げた「新たなアメリカの世紀」の見解とは明らかに相容れないものだった。彼はウクライナ、人道支援、その他の世界的問題に対して「現実的」な外交政策を主張した。その言葉は暗にオバマ政権のオフショア・バランシング戦略のような抑制的な外交政策を暗示している。そのため、彼は大統領選で当初の考えを覆し、トランプ氏のアメリカ・ファーストを臆面もなく擁護している。その観点からルビオ氏は全世界およびユーラシアでの地政戦略、イデオロギー的優位性におけるロシアとの競争よりも、技術と世界市場における競争、政治的軍事的影響力における中国との競争の方が国家安全保障にとってはるかに重要だと考えている。彼の対中強硬派のビジョンは「国内産業能力の再構築」という保護貿易政策と絡み合っているが、これは2016年の大統領選での彼の自由貿易の見解からの逸脱である。また議会公聴会では、新任の国務長官はアメリカ・ファーストの要求を満たすために人道的対外援助の凍結、すなわち民主主義の促進、エンパワーメントなど、経済や国家安全保障におけるアメリカの国益に直接役立たないと考えられるプロジェクトには資金を提供しないと宣言した。しかし批判に直面したルビオ氏は、中絶とLGBTQ問題を除く、医療サービス、公衆衛生、食糧供給など、人命救助のための「人道的」プロジェクトの凍結を免除した。この決定にでは「人命救助」の定義が不明確になり、アメリカの対外援助従事者は自分達の活動を続けるか止めるか決めることができず混乱に陥っている。これはルビオ氏が国務省をトランプ・ファーストの方針で仕切ったために起こったことである。(つづく)
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