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2025-08-15 16:11
(連載1)現代日本は「戦時中」である
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
すでに日本は「戦時中である」という考え方が、SNSの中で言われているということに関してみてみることにしましょう。これは、私の考えるところ、「戦争」というもののとらえ方や定義の仕方の中に入るということになります。実際に「武力紛争が日本の領土周辺で行われている」という事実はありません。しかし、すでに領土をめぐる不法占拠の問題や領海への不法侵入の問題は、数多くありまた北方領土も竹島もまったく解決していないのです。そのようなことから、この内容を見てみることにしましょう。2025年の日本が「すでに戦争の中にある」とする説は、従来の戦争観を根本的に問い直すものであり、軍事的衝突が起きていないにもかかわらず、国家が多層的な脅威に晒されている現状を「戦争状態」とみなす視点に基づいています。この考え方は、ロシアのウクライナ侵攻以降に再注目された「グレーゾーン戦争」や「ハイブリッド戦争」の概念と深く関係しています。まず、戦争の定義が変化しています。かつては戦争といえば、宣戦布告があり、軍隊同士が交戦し、終戦条約で終わるという明確な枠組みがありました。しかし現代では、戦争は「状態」であり、「出来事」ではないとする見方が広がっています。つまり、軍事衝突がなくとも、国家の主権や安全保障が継続的に脅かされているならば、それはすでに戦争の一形態であるという認識です。
この視点から見ると、日本はすでに複数の戦争的状況に直面しています。たとえば、中国による尖閣諸島周辺での海警船の常態的な領海侵犯は、物理的な衝突こそ起きていないものの、主権の侵害が日常化しているという意味で「低強度の戦争」と言えます。北朝鮮による弾道ミサイルの発射も同様で、日本の領空を通過するミサイルが複数回確認され、Jアラートが発令されるなど、国民の安全が直接脅かされています。このように、すでに隣国(海を挟んでの隣国ですが)との間に武力行使(武力的な威圧を伴ったという意味です)の伴った直接的な「威圧」があるとしています。国連憲章第2条4項で、すべての加盟国は、国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全や政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならないと規定されています。また、1986年のニカラグア事件国際司法裁判所判決では、この原則が国連憲章上の原則であるだけでなく、慣習国際法としても確立していることが確認されました。当然に武力を伴う威嚇は、戦争につながるという事でありまた戦力の誇示ということになると解釈されるのです。そのことはすでに「何かあれば戦争をする」という意思表示でありまた、「戦争状態」の一形態であると考えられます。
さらに、情報戦や認知戦の領域では、SNSやメディアを通じた偽情報の拡散、世論操作が進行しており、国民の意識や政策決定に影響を与える「非物理的な戦闘」がすでに始まっています。これは、戦争がもはや兵器だけでなく、言語・映像・感情をも武器として用いる時代に突入したことを示しています。認知戦とは、人々の認識や判断に影響を与えることを目的とした戦略的な情報操作であり、情報戦はその手段として、偽情報・プロパガンダ・サイバー攻撃などを駆使します。以下に、現在の日本が戦争状態にあるとされる具体的な事例を示します。まず、2025年の参院選を前に、日本国内では海外からの認知戦が活発化しています。ロシアは「反射的統制(Reflexive Control)」という理論に基づき、日本の有権者に特定の情報を流すことで、自発的にロシアに有利な判断を下すよう誘導する戦術を展開しています。これは、民主主義制度への不信感を煽り、選挙結果の正統性を毀損し、社会的分断を深めることを目的としています。
また、ロシア政府系メディアの日本語SNSアカウントの拡散数は、2024年から2025年にかけて3倍以上に増加しており、動物や文化など親しみやすいコンテンツに紛れて、ロシアに有利なナラティブが巧妙に挿入されています。これにより、一般市民の認識が徐々に誘導され、国家の意思決定に影響を与える可能性が高まっています。さらに、笹川平和財団が発行する「情報戦・認知戦ニュースレター」では、台湾周辺での中国の軍事演習に伴うプロパガンダ動画や、偽装サイトを通じた米台関係に関する誤報の拡散事例が紹介されています。これらは日本にも波及し、アジア地域全体の認知空間を揺るがす要因となっています。災害時にも認知戦のリスクは高まります。たとえば、地震や台風などの災害発生時には、SNS上で「人工地震」や「政府による人口削減計画」といった陰謀論が拡散され、社会不安を煽る動きが確認されています。こうした情報は、感情的な反応を引き起こし、冷静な判断を妨げることで、国家の統治能力を間接的に弱体化させる効果を持ちます。このように、日本はすでに認知戦と情報戦の標的となっており、国民の認識・判断・行動に影響を与える戦略的な攻撃が日常的に行われています。これは、戦争がもはや兵器による破壊だけでなく、情報による支配と誘導の時代に突入したことを示しており、日本はその最前線に立たされているのです。(つづく)
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