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2025-10-21 12:56
(連載2)ガザ地区の戦争集結は今後どうなるのか
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国として、停戦決議案の文言調整に深く関わりました。特に欧米による一方的な非難構図を回避するため、中国と連携し、「武力行使の一方的エスカレーションをただちに停止し、人道支援を最優先すべき」だとする共同声明を発出。これによって、安保理決議が採決に至った際に賛否動向が二極化するのを防ぎ、幅広い支持基盤を形成するうえで鍵を握りました。中国は外交通商担当閣僚を通じて、中東各国とオンライン会議やバーチャルサミットを重ね、イスラエルとパレスチナ双方に即時の停戦を呼びかけました。国連総会での演説では「ガザ地区の民間人保護なくして持続的な和平はあり得ない」と訴え、国際世論を人道重視へ引き寄せることに注力。加えて北京は、自らの“第三者的立場”を活かして将来の復興資金やインフラ再建支援を打診し、紛争後の復興プロセスにおける存在感を強めました。
交渉の舞台裏では米国とカタールが主要仲介者として機能し、合意文案の最終調整を主導した。一方で、エジプトはガザとシナイ半島を結ぶラファ検問所を開放し、人道通路を確保。トルコはハマス高官とのチャネルを保有し、双方の譲歩余地を探る“緩衝地帯”として立ち回りました。さらにイランは、ハマス側への軍事・資金面での長年の支援を背景に、「次の交渉ラウンドに向けた準備が整った」とする仲介者らの見解を裏付ける影響力を行使したとされています。これら多様なプレイヤーは、直接の調印当事国ではないにもかかわらず、国際政治の力学を動かす“潤滑油”として停戦合意の成立に寄与しました。次のステップでは、これら各国がどのように復興支援や長期和平プロセスに関わるかが、合意の持続性を左右するでしょう。
第一段階の停戦合意は成立直後から比較的順調に履行されつつありますが、今後の展開は主要な条件の完全達成と、裏に残る構造的課題への対応次第で大きく左右されるでしょう。第一段階発効後24時間以内に、イスラエル軍は合意線まで部隊を撤収し始め、ハマス側も人質の移送・解放準備を進めました。ガザ北部ハンユニスの医療施設では、国連やNGOの支援団体が人質搬送に立ち会う一方、エレズ検問所周辺では物資搬入ルートの再開作業が加速しています。こうした動きは、合意の即時停戦・人質解放・支援物資搬入という「即効パッケージ」が実行に移された結果だと言えます。
この合意はトランプ前米大統領が9月末に提示した「20項目のガザ和平案」に沿ったもので、即時停戦、人質の順次解放、包囲解除、支援物資搬入再開といった要素を包括的に盛り込んでいます。合意に基づき、カタール・エジプト両国が橋渡しを続けるなか、国連機関も参加して違反時の報告メカニズム構築に向けた調整が進んでいます。ただし、ハマス武装部隊の重火器撤去や、ガザ地区内での統治構造再編といった長期和平に不可欠な要素は未解決で残ったままです。これらがクリアされない限り、次の段階に移行しても散発的な攻撃や封鎖再開によってプロセスが頓挫するリスクが高いと見られています。総じて、第1段階は現状、大きな破綻なく進んでいるものの、計画通り「停戦の完全履行→第2段階交渉開始」という青写真を描けるかは、双方の政治的意思と国際仲介の粘り強さにかかっています。人質全員の解放と部隊撤収が期限内に完了すれば、次の枠組み交渉へ条件付きで移行できる可能性が高まる一方、小さな逸脱でも信用は急速に損なわれ、再び紛争へ逆戻りする恐れが拭えません。(おわり)
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