これらの問題は、ウクライナ国内だけに原因があるわけではない。ヨーロッパ改革センターのトマス・バラセク外交防衛部長は、ウクライナの政治家達がブリュッセルとの関係強化に消極的になった理由は、EU加盟国の中にウクライナの加盟を望まない国があるからだと述べている。バラセク氏はEUに対して、ウクライナの統治の不手際を責め立てるよりも、その改革を支援すべきだと主張する。バラセク氏は今回の選挙はEUとウクライナの関係を考え直す良い機会だと言っている(“Ukraine and the EU: A vicious circle?”; CER Bulletin; December 2009/January 2010)。
カナダのアルバータ大学のデービッド・マープルズ教授は、ウクライナ国民がユーシェンコ大統領とティモシェンコ首相の内部抗争に嫌気がさしていると言う。またオレンジ革命以後も続く腐敗で、現政権の支持率は下がっているという(“Ukrainians Disillusioned with President Yushchenko”; VOA News; 13 January 2010)。
ユーシェンコ大統領は言語と文化のウクライナ化によってロシアとソビエト時代の影響を払拭しようとしたが、ロシア系住民の抵抗に遭った。アメリカは「ユーシェンコ氏に指導力がない」として、政権支持に消極的であった(“Where did Ukraine's Yushchenko go wrong?”; Reuters; January 11, 2010)。オバマ大統領は昨年の天然ガス紛争の際にクレムリンの膨張主義を阻止しようともせずに、ショー・ビジネスのスター達とドンチャン騒ぎを楽しんでいた。
ロシアとの関係は、選挙後のウクライナ政治の主要課題である。関係改善にかけるロシアの期待は高い。王立国際問題研究所でロシア・ユーラシア部長のジェームズ・シャー氏は、ロシアの歴史がキエフへのルスの入植に始まるので、ロシアにとってウクライナは自国の歴史的アイデンティティーの一部だと指摘する。これはNATOとの地政学的な競合にも劣らず重要だとシャー氏は言う(“Will Moscow-Kiyv Ties Improve After Ukrainian Election?”; VOA News; 15 January 2010)。ロシアに媚びるかのように、ヤヌーコビッチ氏は1932年から1933年にかけてのホロドモール飢饉に関してロシアを非難するウクライナのナショナリストたちを批判した(“Ukraine must not blame neighbors for famine – Yanukovych”; RIA Novosti; 16 January 2010)。(つづく)