まず「徴用工」という言葉の使い方はミスリーディングなので、旧朝鮮半島出身労働者(旧半島労働者)問題と言わせて頂きます。今回の新日鉄裁判の原告4人も強制的に日本に連れてこられたわけではなく、自身で募集に応募してきた方々です。さて、新日鉄住金が敗訴した韓国最高裁判決は、今後の日韓関係を崖っぷちに追いやった罪深い判決です。日韓関係の根本を揺るがせにする判決を、よくもまあ、たった13人の判事がこんなに「気軽に」出せたものだと驚愕しました。尊敬するミラン・クンデラには申し訳ありませんが、私の脳裏に真っ先に浮かんだ言葉は、「存在の耐えられない軽さ」です。今回のハンドリングを間違えると、本当に日韓関係は終わる。しかし、そういう感覚を、韓国司法も韓国政府も(おそらく韓国国民も)持っていない。もしくは、気にしていない。(日本政府の厳しい反応に多少は青ざめているところかも。)もともと、慰安婦問題が再燃するきっかけになった2012年の最高裁判決(個人の請求権は日韓請求権協定により消滅していないと主張)があったので、今回の判決において新日鉄が敗訴するということは予想の範囲でした。日本政府も予想していたと思います。しかし、そうは思っていても、2012年時に以上に飛び越え感満載の荒唐無稽なロジックで、こんなマグニチュードの判決をたった数か月で出したものです。今回の13人の判事の内8人はムンジェイン政権が任命した左翼革新系ですから、ムンジェイン大統領、韓国政府含め、事前に判決結果はわかっていたはず、というかむしろムンジェイン大統領が今回の判決を誘導したも同然です。にも関わらず、日韓関係に与える影響については、ムンジェイン大統領は、きちんと予想し覚悟した上でそうしたのか怪しい、殆ど配慮した気配がない、ということについて、非常に問題を感じます。むしろ、日本の反応が厳しかったことに対して「逆切れ」しているという笑えない状況です。しかも、判決文本文を読みましたが、私も外務省で3年半国際法を担当していましたので多少の知識はあるつもりですが、結論ありきの、国際法(established international law)を理解しているとは思えない、突っ込みどころ満載のトンでも判決です。むしろ、勝手に「ウリ式国際法」を創作したと評価されるべきものでしょう。