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2008-03-18 16:09
(連載)外国人への地方参政権付与は慎重な対応を要す(2)
角田勝彦
団体役員・元大使
結論として、特別永住外国人への地方参政権付与は無理であると考える。以下に、(1)日本国籍をとりたくないとする特別永住外国人に地方参政権を付与すべきか否か、(2)憲法はどのように規定しているか、(3)国際的な基準はどうなっているかの順で、この問題を考えてみたい。
(1)2006年末現在、永住外国人は83万7000人に上る。その半数以上が、終戦まで日本人として扱われた在日韓国・朝鮮人や台湾人とその子孫である特別永住者である。この約40数万人の特別永住者(ほとんどが韓国籍または朝鮮籍)には日本国民と同等の社会的権利の多くが認められている。国民健康保険も国民年金も適用されている。国籍取得についても2003年から帰化の動機書が不要になるなど、特別永住者の帰化申請手続きは年々容易になりつつある。今後ますます容易になろう。つまりこの問題の本質は、帰化による日本国籍取得はしたくない(日本国籍の取得によって失うことになる現国籍を保持したい)が、日本の地方参政権は得て内政などに影響力を行使したい、という要求を認めるかどうかにある。日本国籍を欲しくないとする者の中にも分裂がある。韓国民団は地方参政権付与を主張するが、朝鮮総連は「在日同胞は共和国公民である」という立場から「日本国への政治参加は民族意識を稀薄化させることにつながる」として付与へ反対を表明している。
(2)憲法15条1項の「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」という規定、および平成7年の最高裁判例から、参政権が外国人(日本国籍を持たない者)に保障されないことは明らかである。「法律によって地方参政権を付与することは、憲法上禁止されているものではない」という同判決の傍論はあるが、あくまでも傍論であり、実際に「外国人地方参政権付与法案」なるものが成立すれば、違憲訴訟が起こされた場合、合憲の判決を得られるかは、疑問である。同判決中には「公務員を選定罷免する権利を保障した憲法15条1項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である」とある。参政権付与に積極的な意見の中にも、どの程度付与するかについては、分裂がある。「自治体は国の統治機構の一部との側面もあるので、外国人が直接、為政者の立場になる被選挙権は与えない」との立場が有力である。選挙権のみ与えようというのである。
(3)現在の主権国家併存のウェストファリア体制のもとでは、国民の定義は各国の決定に委ねられている。大きくは、血統主義と生地主義である。二重国籍を認めるか否かも、各国次第である。日本は原則として認めていない。いずれにせよ、どの国も国民と外国人を区別している。比較的に言ってだが、開かれた国と閉ざされた国がある。移住者の受け入れ、永住権や国籍の付与などの面で差が見られる。日本は世界の多くの国と同じく後者に属する。国際化の時代といっても、どうするかは各国が決めることである。基本的に参政権は国民のみに認められる権利である。外国人に参政権を与えている国は少なく、EUや北欧のように一体化(主権意識の希薄化)が進んだ国同士が中心である。日本と韓国の現状とは大違いである。相互主義の問題ではない。なお、韓国ではいちど廃案とした後であるが、2006年の統一地方選から永住外国人に選挙権が与えられたが、韓国に永住する在韓日本人は二桁とされ、40数万人の在日特別永住者とは比較にならない。納税とも関係ない。参政権は納税とは別の次元で決定される。在日永住者は増えているが、特別永住者は減ってきている。永住者すべてに参政権を認めようとする意見は少ない。参政権の面でも「特別」性を強調しようとするのは、過去にしがみつくことでもあろう。(おわり)
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投稿履歴
(連載)外国人への地方参政権付与は慎重な対応を要す(1)
角田勝彦 2008-03-17 16:30
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(連載)外国人への地方参政権付与は慎重な対応を要す(2)
角田勝彦 2008-03-18 16:09
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角田大使のご意見に同感です
苦瀬 雅仁 2008-03-30 02:07
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