「”Democracy fights in anger”(民主主義国は怒りに駆られて戦う) by ジョージ・ケナン」。ウクライナの戦いに呼応して、日本含め「自由民主主義陣営」の国々が日々結束を強める変化にここ数日ずっと、あの米ソ冷戦の封じ込め作戦の立案者であるジョージ・ケナンの有名なフレーズが頭の中をぐるぐる回っている。プーチン大統領は、「死に体」のNATOが、「ヘタレの」西側民主主義国が、欧州から遠く離れた日本や豪州などアジアの国々がここまで結束するとは予想しなかっただろう。それは、プーチン大統領の思考が、マキャベリズムとクラウゼヴィッツ的戦争観に支配されていて、自由や民主主義の本質を分かっていないからだ。
もともとこの「民主主義国は怒りに駆られて戦う(Democracy fights in anger.) 」というのは、ケナンが米ソ対立の中、米国がどういう場合に戦争をするかについて述べた部分である。なので全ての民主主義国について該当するわけでもないのだが(民主主義といってもいろいろある)、私はかならずしも地政学的利害計算に基づかない(つまり、クラウゼヴィッツから見れば馬鹿げて子供じみて見える)衝動こそ自由や民主主義を信奉する国々に共通する点であり、今回、プーチン大統領に対する勝利をもたらす要素となり、同時に、追い詰めすぎて適切な均衡を失う解決となる要素ともなると考える。長いのでざっくり要約すると、「民主主義国は平和を愛し、挑発されてもなかなか戦争に訴えようとはしない。しかし、一旦、武力に訴えなければならぬほど追い詰められ戦うことになるなら、そのような事態をもたらしたことについて相手を許さない。民主主義国は怒りに駆られて戦う。そして、敵が二度と同じことができないよう徹底的に罰を与える。」